このコーナーでは、本サイトの(暫定)編集長を務める橋本が、日々の仕事やリサーチを通しながら、様々な芸術祭やアートプロジェクト、表現活動について考えたことなどをご紹介していきます。

現代美術に関する企画や編集の仕事などを生業にしている私ですが、日々の仕事から少し離れていち観客として何らかのイベントを見に、あるいはちょっとした旅に出かけている最中に、仕事につながる様々なヒントを得ることも少なくありません。「インプット無くしてアウトプット無し」「遊ぶように働き、働くように遊ぶ」と自身に言い聞かせながら、訪れた場へ貪欲に身を預けることがありますので、このコラムも出先での出来事などを記すことが多くなっていく気がしています。

先日は、本サイトのためのはじめてのインタビュー収録と、神戸でのトーク出演のためなどで6日間ほどの関西滞在を行い、いくつかの現場へ足を運ぶことができました。

最初の3日間の滞在地は京都。関西国際空港から向かう道すがら、ちょうどワークショップを行っているというBreaker Project(大阪・西成区)の現場を覗かせていただきました。

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呉夏枝(Haji OH)らにより運営される、kioku手芸館「たんす」

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2003年にはじまったBreaker Projectですが、年々かたちを変えながら、一貫してアーティストの表現の可能性を探りつつ、地域への開き方、コラボレーションの絶妙な関係を保っています。この「たんす」は、呉夏枝が行う「編み物をほどく/ほぐすワークショップ」の拠点となりながらも、それに興味を持ち、関わる地域住民が自然に集まることのできる場となり、そこから住民の表現を救いあげるかのような活動も生まれているようでした。

ちなみに、同じ西成区で俗に「釜ヶ崎」と呼ばれる隣接エリアでは、NPO法人ココルームがカフェを構えながら、アーティストや地域住人の表現や学びの場づくりなどに継続して取り組んでいます。京都での滞在を挟んで、彼らが実施する釜ヶ崎芸術大学にも参加してきました。釜ヶ崎芸術大学は、今年は何と〈ヨコハマトリエンナーレ2014〉にも参加します。

続いて京都でのインタビュー収録。掲載第1弾となるので、どのような方にお願いするべきか非常に頭を悩ませましたが、昨年数度に渡って足を運んだ〈瀬戸内国際芸術祭〉の会場のひとつである小豆島の中でも、ひときわ興味を惹かれる活動であったゲストハウス+アートのプロジェクト《クマグスク》に取り組んでいた矢津吉隆さんにお願いすることにしました。関西が拠点であることは知っていたので、この機会を利用しようということでもありました。

ある程度コンテンツのイメージの分かるテストサイトを事前にお送りすることできたので、何でこのようなサイトをつくろうと思っているのかなどをこちらからも話しつつ進行。今回の旅や、瀬戸内国際芸術祭でも私がゲストハウスを多く利用していることもあってか、お互いに共感できる話が多く、非常に楽しいひと時でした。当初は普通に矢津さんのお話しを中心にまとめる予定でしたが、むしろこの収録の雰囲気を分かりやすく編集することができれば、サイトの狙いについてもうまく伝えることができるのではないかと後日考え、対談に近い形式で掲載とさせていただきました。

特集:ゲストハウス+アートで共有される鑑賞体験:《クマグスク》矢津吉隆インタビュー

収録に使用させていただいたのは、大学の後輩のお友達がやっている、西院の古い商店街にあるカフェVOXXN CAFEです。ついでがあれば地域活性につながるアートイベントができないか相談もしたいと言われていたこともあり、京都ではここのゲストルームにお世話になっていました。

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滞在中にいろいろとそのお話しをうかがい、ポテンシャルはまだまだはかれませんが、考え方の整理や、典型的なパタンや危ないパタンをレクチャーしたり、しかけ方の簡単なブレストなどを行いました。焦らず良い形になることを期待して、定点観測していきたいと思います。

お店はまだ始めたばかりのようですが、ここで暮らすように長く続けたいそうでその感じは素敵だなと思いました。夜な夜な音楽系の若い方々集っているようです。京都の方、ぜひ応援してあげてください。

他にも、京都での滞在中には、東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)という、京都におけるアーティストの活動を様々なかたちで支援していく活動をしている機関で働いている知人を訪ねて情報交換をしたり、近江八幡(滋賀)のボーダレス・アートミュージアム NO-MAで行われている展示を見に行くなどしました。

※3月に行われたNO-MAの活動
特集:福祉と美術の境界を超えた周遊型の展覧会〈アール・ブリュット☆アート☆日本〉

神戸では、2007年に神戸アートビレッジセンター[KAVC]とBankART Studio NYK(横浜)で私が2007年に企画した、同世代を中心としたグループ展〈都市との対話〉を受けたトークイベント「ひと×間(ひとま)hanaso -ハナソ-」に呼んでいただけました。〈都市との対話〉は、私がまだ活動のフィールドをまちの中や他分野とのコラボレーションにまで広げていなかった頃の企画ですが、ステイトメントとしてはそのようなアクションを視野に入れたものになっていました。その後の話として今の取り組みなどを話題にさせていただくということは、自ずと活動を振り返りながら変遷をたどるということになり、自らにとっても大変有意義な機会となりました。

ちなみに宿は、KAVCがホテルを用意するというところ、無理を言って新開地の元連れ込み宿を利用したゲストハウスユメノマドにしてもらいました。ここは瀬戸内国際芸術祭で知り合った神戸の知人が教えてくれた比較的新しいゲストハウスで、日々美味しい珈琲を飲むことができるカフェとしても運営されていたり、週末には音楽イベントが行われているなど、地元の若者などが多く出入りしているようです。

連泊の間にはスカイプ会議に原稿執筆、別の施設への取材などにも追われましたが、仕事をできる環境もあり、交通の便も良く、快調に仕事をこなして東京へ戻ることができました。

yumenomad