このコーナーでは、本サイトの(暫定)編集長を務める橋本が、日々の仕事やリサーチを通しながら、様々な芸術祭やアートプロジェクト、表現活動について考えたことなどをご紹介していきます。

ヨコハマトリエンナーレ2014 http://www.yokohamatriennale.jp/

今年で第5回目を迎える横浜トリエンナーレ(〈ヨコハマトリエンナーレ2014〉、横トリ)が開催中です。今年はアーティスティック・ディレクターが森村泰昌さんということでかなり渋めの内容。第1回展や前回(第4回展)のような祝祭性、第2回展のようなアートプロジェクト性を求める方には物足りない内容でしょう。

しかしながら、大規模フェスティバルにはどうしても求められるこの「何かにぎわっている感じ」は無くてはならないものなのか。今回「忘却」がテーマとなっていますが、これはむしろそういった「芸術祭って何か楽しい作品が沢山あるよね」という価値観からはこぼれてしまう表現に注目するということなのですがから、当然の結果でもあるわけです。

何せ、最初の会場、横浜美術館に入ってまず目に飛び込むのはアート作品を廃棄するための巨大なゴミ箱(マイケル・ランディ)。大阪のドヤ街、釜ヶ崎と呼ばれる地域を拠点に活動する釜ヶ崎芸術大学は館内で大きくスペースを取り、アーティストに限らない様々な人の表現の力を見せ、美術館前=みなとみらいのど真ん中では炊き出しという普段人がなかなか目にしない活動を提示しています。※前回コラム参照

むしろこのような思い切った方向性は、実績を重ねてきた横トリのような舞台でないとできないだろうし、各地で増えてきた芸術祭と違うベクトルを提示するということでも、個人的には非常に評価できる内容だと感じています。

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マイケル・ランディ《アート・ビン》

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釜ヶ崎芸術大学 横浜美術館内展示風景

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014 http://www.paratriennale.net/

こちらは横トリの会期に合わせて象の鼻テラスを拠点に行われている、今年新たにはじまったフェスティバルです。4月に立ち上がった活動なので規模も横トリに比べれば小さいし、「障害者とプロフェッショナルが協働する現代アート展」ということでコラボレーションによる表現を前提としているので、非常にアートプロジェクト的。まだまだこれからどうなるかという段階のプレゼンテーション展示(コア期間+9/18〜10/13のみ)や、パフォーミングアーツの公開ワークショップ&発表を軸に展開しています。

私はドキュメンテーション ディレクターとして関わらせていただいているのですが、障害者と一緒にひとつのイベントをつくりあげること、そのプロセスや結果を提示すること自体が非常に大変で、なかなかドキュメントの企画まで手が回らないという状況に苦戦しています。ということは、障害者が普段いかに生きにくい生活を送っているのかということにも想像が及びます。

フェスティバルを通して、障害者が社会の中でどのように力を発揮できるのか検討を行うことができるのではないか、という福祉的な意義をうたうことができそうですが、一方では純粋に新しい表現に出会える可能性が高い取り組みだと感じており、個人的にはその部分にもしっかり注目して仕事に取り組んでいきたいと感じています。

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崎野真祐美・工房いなば・池田富士美×岩崎貴宏
Photo:山崎真

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オープニング・パフォーマンスの様子
Photo:山崎真

他にも横浜の創造界隈(と呼ばれるエリア)では、以下のような様々な催しが行われています。ぜひ多くの方に合わせて足を運んでいただきたいです。

東アジアの夢ーBankART Life4 http://www.bankart1929.com/eastasia/
8月1日(金)〜11月3日(月・祝)
BankART Studio NYKほか

黄金町バザール2014 http://www.koganecho.net/koganecho-bazaar-2014/
8月1日(金)〜11月3日(月・祝)
京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」の間の高架下スタジオほか

Find ASIA http://ycc.yafjp.org/findasia
8月1日(金)〜11月3日(月・祝)
ヨコハマ創造都市センター

関内外OPEN!6 http://yokohama-sozokaiwai.jp/kannaigai
10月17日(金)〜10月19日(日)
ヨコハマ創造都市センターほか

スマートイルミネーション横浜2014 http://www.smart-illumination.jp/
10月30日(木)〜11月3日(月・祝)
象の鼻パークほか