ヨコハマトリエンナーレ2017 開幕
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴスが8月4日から開幕しました。赤レンガ倉庫や横浜市開港記念会館、氷川丸船内など、横浜ならではの建造物に足を踏み入れ、国内外から招聘された38組のアーティストと1プロジェクトの作品を巡ることができます。開幕の様子をフォトレポートでお伝えします!
今回のサブタイトル「島と星座とガラパゴス」は、「接続」と「孤立」がテーマ。昨今の紛争、移民・難民問題やグローバル化、イギリスのEU離脱、各国におけるポピュリズムの台頭などを念頭に、3名のディレクターおよび異なる専門分野をもつ6名の構想メンバーがコンセプトとタイトルを決定、作家が選定されました。
【横浜美術館】
アイ・ウェイウェイ《安全な通行》《Reframe》2016
横浜美術館に行くとまず目に飛び込んでくるのは、アイ・ウェイウェイの作品。美術館の柱には、根元から天井まで隙間なく巻きつけられた救命胴衣が。窓には救命ボートが設置されています。救命胴衣は難民が命がけで海を渡る際に実際に使用されたものです。よく見ると、救命胴衣には日本でも見慣れた企業の名前がプリントされています。
ジョコ・アヴィアント《善と悪の境界はひどく縮れている》2017
エントランスには、ジョコ・アヴィアントによる巨大な竹の作品。
カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャ《ジルバ タンゴフライ タグプラント》2016
こちらはカールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャによる作品。シュルレアリストたちが好んで用いた手法「優美な死骸」を元に、4名の豪華アーティストがリレー形式で共作しています。
畠山直哉《陸前高田市高田町 2012年6月23日 ♯1》2012-14
北フランスのボタ山や、畠山の故郷・陸前高田の風景を写した作品が並びます。美術館のなかでも、特に静けさが漂う空間。英語タイトルの“Wind-Light”は中国語で「風景」が意味するところを翻訳したそう。
今回、最年少で参加した瀬尾夏美は、東日本大震災以後に移住した陸前高田の風景を水彩画とテキストで発表。横浜赤レンガ倉庫の窓辺には、第二次世界大戦直後についての証言を集めたテキストが展示されています。
ワエル・シャウキー《十字軍芝居:聖地カルバラーの秘密のためのあやつり人形》2015
ワエル・シャウキーは今回、日本初来日のエジプト人作家。キリスト教の聖戦をもとにした人形芝居を映像化した「十字軍芝居」を発表しています。重なるように床に敷かれたペルシャ絨毯と、映像から流れ出る耳慣れない言語、異相の人形に囲まれるひととき。時間の流れがここだけ違うような感覚に襲われます。
オラファー・エリアソン「Green Lightーアーティステック・ワークショップ」
会期中にランプを組み立てるワークショップが開催される予定です。このワークショップは、もともと亡命希望者や難民、移民を対象に彼らを歓迎する実践的な取り組みとして考案されたもの。さまざまな事情により祖国や郷里を離れ日本で暮らす人々の状況を知り考えることで、現代日本社会における「わたしたち」の姿を捉え直そうという取り組みです。
【横浜赤レンガ倉庫1号館】
宇治野宗輝《プライウッド新地》2017
赤レンガ倉庫でもっとも目を惹くのは、宇治野剛による作品《プライウッド新地》。宇治野が“Janglish”とでも呼ぶべき、日本語のイントネーションで英語を話す映像と、ミキサーやワイパー付き自転車、電気ノコギリなどの改造家電製品、ビルに見立てられたクレートで構成されたインスタレーション作品です。音や光を発し動く家電製品に要注目。本来の家電の動作とは異なる機能が接合されることで、生き物のような生々しさや不気味さが加わっています。
トリエンナーレ参加2回目となる小沢剛は、フィクションと事実が入り混ざる《帰ってきた〜》シリーズの新作を制作・発表しています。今回作品のモデルになっているのは、横浜生まれの思想家・岡倉天心です。岡倉が10ヶ月ほどインド・コルカタに旅行した経歴があることを下敷きに、コルカタでの足跡を辿り現地の音楽家たちとMVを制作。8枚からなるペインティング(看板絵)は、現地で制作を依頼したもの。すぐ側に海が見える会場で、100年前に世界を視野に活躍した人物に想いを馳せるひとときです。
【横浜市開港記念館】
開館100年を迎える建物では、柳幸典による作品を展示。今回は、《蟻と日の丸》、憲法9条の条文をLEDライトに表示させる《アーティクル9》に加え、ゴジラをモチーフとした新作を発表しています。
1930年から60年まで実際に運行されていた日本郵船氷川丸の客室では、田村友一郎《γ(ガンマ)座》を展示。氷川丸に乗船し移動した人々(戦時中の宝塚歌劇団による慰問団や嘉納治五郎)や技術の変遷にまつわるエピソードが、実際に通信史をしていた人物に頼んだというモールス信号の音とともに流れるサウンドインスタレーション。部屋の周囲には氷川丸の航路を示した地図が飾られています。作品があるのは、船内でももっとも奥の方、三等客室。一等客室などの豪華な装飾をじっくり鑑賞し氷川丸が辿った歴史を辿ってから展示空間に身を委ねるのがおすすめ。客室を出たあと、これまでとは少し違う景色が見えてきます。
ヨコハマトリエンナーレは11月5日まで開催。詳細は公式サイトをご確認下さい。
*作品写真は全てヨコハマトリエンナーレ2017展示風景
ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
会期: 2017年8月4日〜11月5日 ※休場日:第2・4木曜日(8/10、8/24、9/14、9/28、10/12、10/26)
開場時間:10:00〜18:00(最終入場17:30) ※10/27、28、29、11/2、3、4は20:30まで開場(最終入場20:00まで)
会場:横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館 地下 ほか
主催:横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会